社会福祉法人、学校法人、株式会社などの運営団体による違い
保育士としてどこかに雇って欲しいとき、施設を運営している団体による違いがありますよね。
保育士なら「社会福祉」の科目でさらっと触れるかもしれませんが、施設運営者についてそんなに詳しくないでしょう。
株式会社だから○○などの思い込み的な理解はある意味危険ですが、傾向を知っておくと判断材料になります。
今から就職したくて応募するのがどんな団体か知らないと、入ってから「こんなはずじゃなかった」になりやすいから。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
保育施設を運営している団体は、自治体の直営もありますが、基本的には民間の法人です。
多いのは社会福祉法人や株式会社で、もちろん1つ1つの法人によって特色はありますが、この記事では大体の傾向をお話しようと思います。
用語解説ですが、「個人」に対しての「法人」。
法人とは人が集まっているけど、「法律上は個人と同じ」と決まったもの。
わかりやすく言えば、銀行口座の名義や住所が「個人名」でもいいし「会社名」でもいいですね。
だから〜法人と付いていなくても、株式会社でも法人です。
この記事では広い意味で、団体と呼びます。
- 1-1.運営団体と簡単な説明
- 1-2.保育園運営団体の割合
- 3-1.社会福祉法人
- 3-2.株式会社
- 3-3.学校法人や宗教法人
保育関連の用語解説記事はこちら↓
【保育施設の運営法人の違い】社会福祉法人や株式会社など違い比較
【認可保育園と認可外、認証の違い】公設民営など保育士の基礎知識
【正規保育士、非常勤、契約、派遣保育士】勤務形態による様々な違いを解説
1.保育施設を運営する団体の種類と割合
1-1.保育園の運営団体と簡単な説明
保育施設を運営している団体はこんな感じ。
- 社会福祉法人
- 株式会社
- 学校法人
- NPO法人
- 宗教法人
- 自治体運営
それぞれについて特徴を、簡単に説明します。
社会福祉法人
昔からの流れで、保育園の運営者としては一番多い形態です。
社会福祉法人設立には自己資金やしっかりとした経営基盤、定款を定めたり、役員・評議会設置などいくつもハードルを超える必要があります。
だからそれらを乗り越えた社会福祉法人は、福祉の世界で信用が高め。
施設運営についても国や自治体からの補助も多くて税制面でも優遇され、運営も安定しているところが多いです。
株式会社
こちらは2001年にそれまでの「保育園運営は社会福祉法人だけ!」という規制を緩和したことにより、増えてきています。
保育に関する規制緩和(厚生労働省)
と言ってもまだまだ統計的には少ない、保育園運営者です。
でも少ないくせにネット上で広告が出ている求人の、体感では8割くらいが株式会社の保育士募集。
社会福祉法人よりも色んな面で自由にやれる一方、経営は自力でやる必要があります。
安定性は会社の規模や、他で行っている収益事業にもよりマチマチです。
学校法人
幼稚園や私立学校を運営している法人が、流れで保育園を運営しているケース。
保育園単体では割合的に少ないですが、こども園になると全体の4割が学校法人となっています。
宗教法人
お寺や教会が、敷地内で一緒にやってるような保育施設。
探せば広い地域内でいくつか見つかる程度です。
お祈りの時間など、宗教色を出しちゃダメな公立ではやらない特有な活動がよくあります。
NPO法人
社会福祉法人程でない資金少なめで、補助金をもらえる法人を作れる形態。
1か所か、多くて数か所の施設を運営しているような感じで、2001年の規制緩和により、保育事業に参入できるようになった運営者です。
社会福祉法人は法律によって「これをやりなさい」「これに違反してはいけません」などの縛りがありますが、それよりは自由な運営をしている法人がよくあります。
☑ひととき預かりなどを低額で請け負い
☑特殊な環境の子どもを支援
など、公的な目から漏れてしまうけれど実際に困っている人を助けるような、草の根的な活動をしているNPOも少なくありません。
自治体運営
最近は公立の園でも民間委託がどんどん進んでいますが、市や区の直営施設もまだ多く残っています。
公務員として「保育士」枠で採用された専門職員が配置されて運営しています。
なんていう人がいるくらい、社会的な信用はまだまだ高めです。
1-2.保育園運営団体の割合
保育園の運営主体の割合は、
社会福祉法人86.9%、営利法人(株式会社)4.9%、学校法人2.8%、その他5.4%となっています。
また、こども園になると学校法人が多くなっています。
学校法人が多いですね。
2.団体による保育施設運営の違いはなぜ出てくるか
同じ保育士として採用されても、運営団体によって色々な違いがあります。
なぜ違いが出てくるかと言えば、団体の目的やお金の出どころなどが違うからです。
例えば社会福祉法人と株式会社を比べてみると
社会福祉法人 | 株式会社 | |
事業目的 | 福祉 非営利 | 営利 |
補助金 | あり | 対象外多い |
税金 | 基本非課税 | 課税 |
株式会社は縛りがない分、自分で経営しなくちゃいけない大変さがあったりします。
ですが例えば小学館のような大きな会社だと、福祉以外の事業で収益を出せているでしょう。(調べてないので私見です)
そうなると保育園受託は、収支は気にしなくていい社会貢献的な活動になりそうですよね。
3.雇用されたときの待遇面などの団体による違いはこんな感じ
この章では採用された場合に職員として、運営団体による違いが何かあるか?
社会福祉法人と株式会社、学校法人を比較して話していこうと思います。
株式会社は割合的には少ないのに、ネット検索で出てくる広告の多くは株式会社による募集、目にする機会も多いためです。
違いが生まれるだいたいの部分は、
●運営・保育方針
●福利厚生、給与や待遇
●異動やポジション、離職・定着率による年齢層
これらについて比較していきます。
3-1.社会福祉法人による保育施設の大体の特徴
社会福祉法人の運営・保育方針
社会福祉法人は長く保育園を運営しており、歴史も長いため拠り所の基礎方針が明確です。
福祉に考えが近いということで、仏教やキリスト教のような宗教的な要素を入れている法人もたくさんあります。
サービスの向上は、「困っている人を助ける」など福祉がベースにあります。
また地域の福祉ニーズを掘り起こして仕事を開拓していくのが努力義務となっています。
社内福祉法改正
地域福祉計画の策定については、平成30年4月の社会福祉法(昭和26年法律第45号)の一部改正により、任意とされていたものが努力義務とされました。
厚生労働省
そのため現場の仕事では、地域の小さい声に耳を傾けると言った方向性。
「子どものため」というあなたの思いと、施設の方針が合いやすいと思います。
一方で働き方について、税金によって補助金が出るため効率や対費用効果と言った、経営的な視点が足りない法人も少なくありません。
中には超効率の悪い働き方、時代に合わないサービス残業や持ち帰り仕事を強いている法人もあります。
歴史が長く方針が定まっているのは、裏を返すと古いやり方にこだわってしまうのかもしれません。
全体的に現場保育士としては、施設のお金の心配をそれほどせずに働けるのは社会福祉法人の特徴だと思います。
社会福祉法人の福利厚生、給与や待遇
法人規模によりますが、給与は安定しています。
公的な施設を請け負って運営している場合(いわゆる公設民営)、自治体から出るお金が何年かの契約で決まっています。
なので準公務員と言っても良いほど、待遇面は安定していることが多いです。
自前で施設をやっている法人でも、国や自治体の基準を満たしていれば補助が株式会社より広範囲で出るため、やはり経営的には安定しています。
もともと経営基盤がしっかりしていないと社会福祉法人にはなれない上、公的な補助も出るため雇用も安定しているという訳です。
異動やポジション、離職・定着率による年齢層
雇用が安定しているため、長年の経験を持つベテラン職員が多い傾向にあります。
経験のある保育士に相談できるのは、現場職員としては大きなメリットです。
他方で職場のボス的な人がいたり、施設長がずっとそこにいてポジションが空かないなんて状況も少なくありません。
ベテランが多いと慣習的なものもあり、ハラスメントに繋がったりします。
その辺りは一長一短かなと思います。
【園長/主任からのパワハラ】ひどい対応が日常的な場合の解決手順
3-2.株式会社による保育施設の大体の特徴
株式会社の運営・保育方針
株式会社は基本的には営利です。
保育などの福祉経営運営を専門にやっている会社もあれば、
参入してきたの?
正直疑いたくなるような会社まで様々です。
参考ニュース:学童指導員の雇い止めは「不当労働行為」 大阪府労働委が復帰を命令
国から運営補助を受けようとすれば、基準は満たす必要があります。
しかしそれを狙わなければ独自の企業内保育所や、経済的余裕のある家庭をターゲットとした高いけれどサービスが充実した保育支援など、形に決まりはありません。
また効率や対費用効果などにはシビアなので、IT化など新たな取り組みに積極的と言えます。
攻めている会社は新園オープンなども多く、立ち上げから関わることができるかもしれません。
保育事業では儲けよりは
「社会貢献でやってるんだ!」
みたいな会社が
あったらいいですね。
株式会社運営園の福利厚生、給与や待遇
会社規模によって、福利厚生は様々です。
変わった休暇を取り入れている企業も、世の中には多いですよね。
給料や雇用に関しても会社によりますが、社会福祉法人に比べると不安定かもしれません。
収支が悪化すれば倒産するかもしれない経営リスクは、2021年のコロナ禍で顕著でしたね。
まあ会社によります。
異動やポジション、離職・定着率による年齢層
一般的に同じ園で長年経験を重ねてきたベテラン保育士、という人が少ない傾向。
転職や退職も多めで、園長だとしても経験年数が浅いことも多く、ノウハウがいつまで経ってもたまらない施設もあります。
裏を返すと園長の席が空きやすく、キャリア形成はしやすいとも言えます。
また系列で複数施設をやっていれば、異動も考えられます。
保育士として採用されても別の能力を買われ、事務や開発、営業など会社内のポジションが変わる可能性も企業によってはあるようです。
株式会社が運営している保育施設で雇われる場合、まとめてみると方針に決まりがないため、
いわゆる「福祉的な現場での関わりをしたい」と思って入社してみたら、福祉寄りでなく経営寄りだった。。
とズレが出やすい運営団体かもしれません。
実際にSNS上で運営者に不満を持つ現場保育士の話を聞いてみると、そんな感じのものが多めです。(個人的な感想)
だから入社してから「こんなはずじゃ・・」を防ぐために、ちゃんと調べることや、転職エージェントなどに話を聞くのが大切だと思います。
【保育系転職エージェントの比較ポイント】注意すべきは押しの強さだけ!
3-3.学校法人や宗教法人による保育施設の大体の特徴
学校法人などの運営・保育方針
学校法人はこども園の運営が多く、福祉というよりは教育寄りの運営方針です。
理念などはしっかりしているのですが、だいたい曖昧な感じなので、現場がどうなっているのかは調べる必要があります。
私立学校の系列だと、理事長のワンマン的な法人ということもあり、それが教育方針に関わってきたら・・
宗教法人は当たり前ですが宗教色が強く、そこに抵抗のある場合は働きにくいと思います。
理念や方針がその宗教で統一されているため、価値観が分かりやすいとも言えます。
福利厚生、給与や待遇
保育園は定員オーバーで待機児童が出ている状態ですが、幼稚園に関しては町中でよくチラシが貼ってあるのを見かけますよね。
幼稚園は必ず行かなければダメではなく、つまりお客さんを集めないと経営ができないという話。
こども園となったことで補助金も出て、税金面でも優遇されているので、経営的には社会福祉法人と株式会社の中間的な感じです。
宗教法人は税制的に優遇されていますが、どうでしょうか。
数も少なく私にも実態はわかりません。
異動やポジション、離職・定着率による年齢層
学校法人の場合は保育士として雇用されるのもあると思いますが「こども園」が多いので、幼稚園教諭もないと採用されないケースもあります。
法人として安定していれば、雇用も安定してくるため離職率も低く、ベテラン職員も増えていきます。
常勤保育士の給料や勤続年数平均
運営者 | 給料 | 勤続年数 |
社会福祉法人 | 258901円 | 10.4年 |
学校法人 | 217167円 | 5.4年 |
営利団体 | 227781円 | 4.1年 |
その他法人 | 252990円 | 8.8年 |
参考 団体ごとの月額給料の違い
厚生労働省 幼稚園・保育所等の経営実態調査結果
4.保育施設の運営団体のによる違いまとめ
この記事でお話したことは、あくまでも傾向です。
私が長く努めていたところも社会福祉法人で、待遇面は業界水準以上、ボーナスも10年以上年間5ヶ月分出てました。
欲しい物も言えば買ってくれ、お金の心配はありませんでしたが、スタッフが経験豊かかと言えばそうでもなかったです。
新入りで配属された施設は、10人以上いる中で一番のベテランが5年勤続。半数以上が2年目まで。
新しい試みを色々試せたり、効率度外視で思いだけで働けたのは楽しかったですが、どうしても全体的な経験不足感。
凡ミスを施設として連発して、さらに似たようなミスを来年も繰り返すみたいな状態でしたね。
あと保育業界として、どの運営団体でも基本的には余剰人員はいませんので、忙しさはあまり変わらないと思います。
就職の際の参考にしていただけたらと思います。
ありがとうございました
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転職・退職・起業に関するカテゴリ記事はこちらで一覧
どこに就職するとしても、個人的な能力面を上げる努力は必要です。
社会福祉法人では、運営者すら経営的な視点が足りなかったり、
株式会社では運営者は経営のことを考えているけれど、現場保育士は「思い先行」で働いているため、折り合いが合わなくなる場合も。。
なので現場保育士として足りないのは、経営やビジネス知識だと私は20年以上の経験から結論を出しました。
私がオススメするのは仕事そのものの勉強を、早い段階でやっておくこと。
私は1つしかスクールを知らないので、それを紹介しておきます。
これ↓
これは表題こそ「一億円事業の作り方」みたいな怪しい感じですが、本質はビジネスつまり仕事そのものの学習です。
世の保育士は、リーダーシップや保育理論を勉強しようとするからそれしか分からず、点が点のまま。
世の中がどうなっているか?ベースがないから、別の知識がそれぞれ独立していて繋がらないんです。
それが基礎としてのビジネス知識を得ることで、持っている全ての知識・スキルが線や面としてつながるようになり、
昨日まで保育に全く関係ないと思ったものが、広がりを持つようになります。
なんで一億円事業の作り方なんてのを保育士の私が勧めているかといえば、そこがビジネスの最高峰なので、そこを勉強すればそれ以下は分かるようになるから。
実際のところ一億円事業作るのは、セミナー受けるだけじゃ無理ですが、副業レベルなら十分可能。
なので、今後保育士としてよく出てくる収入の壁に悩むことも無くなります。
起業のセミナーに登録して、ジャムが学んだ内容はこちら
さすがに保育学生のうちに、追加でこれを学ぶのは難しいと思います。
しかし就職して2年目や、できれば一年目からでも勉強すると、一生の資産になります。
また周りの保育士はビジネス知識なんて誰も持っていないため、あなた発信で職場をよくできる可能性が高くなります。
結果的に「子どものために気持ちよく、みんなが働ける状態に近づく」というわけです。
たまに副業詐欺みたいなものを警戒する方もいますが、全く違うので安心してください。