不安や葛藤に関連した心理
- やることが片付かなくて落ち着かないな
- このままでいいのか?漠然とした不安があるな
こんな不安感は人間なら誰しも持つもの。
不安の全くない人間は、この世にいません。
子どもは特に大人に頼った存在なので、欲求が叶うかは周りの環境に大きく左右されます。
不安になっても自分では対処できない状況が、大人とは比べ物にならないほど多いのです。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
セラピストでもある私(プロフィール)(@jamgakudoツイッター)の視点から、
【不安や葛藤に関連した心理効果、心理現象】
👆今回はこれについて、あなたにお話していこうと思います。
人間なら誰しも持つ性質が、昔から心理学として研究されています。
経験的に「こうなんじゃないかなあ」と思っているいることが、心理学者がちゃんと研究して「やっぱりそうなんだ」となったものは沢山あります。
何年も生きて経験を積んで後悔を重ねながら、または学びながら成長していくのは避けられません。
人生って
の連続ですよね。
そんなのを先に生まれて研究してくれた人達がいっぱいいるので、それを利用しないのは大きな損と言えます。
ただ難しい論文や、探せば見つかるけれど飛び飛びになった情報はなかなか使えません。
なので元東大理系研究者であり、心理学も大学で学んだ私ジャムが保育士に役立つ心理知識として記事をまとめることにしました。
記事最後には関連した心理効果を総括し、
日常的に気をつけたら確実に子どもにもあなたにもプラスになるようなまとめも書いているので、ぜひ役立ててほしいと思います。
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1.プラシーボ効果(プラセボ効果)
1-1.プラシーボ効果の一言解説
薬ではないけれど薬だと信じることで効果が出る現象。
偽薬とも言われます。
1-2.保育士として使える場面
心と体が一体化しているのが子供の特徴なので、気分を変えるのに
甘いお薬だよ
と砂糖水を飲ませてみると、ケロっとする可能性があります。
実際に使われる偽薬も、ブドウ糖などらしいですよ。
似たような効果で単に「水を飲む」ことで気分が変わるというのも覚えておくとよいでしょう。
思い込みの力は強いので、それを利用して不安感をなくせるわけです。
思い込みなんですけどね
1-3.もっと詳しくプラシーボ効果
薬学的にプラシーボ効果は有名なので、新薬が本当に効くのか試験をするときに、思い込みの効果がないかも試験されます。
治験薬が今までにないタイプのものである場合には、比較すべき適当な対照薬がないことから、外観や味を治験薬とまったく同じにしたプラセボを作り、比較試験を行います。
大日本住友製薬
- 「薬を出してもらった」
- 「これを飲めば治るはず」
プラシーボ効果は、こんな思い込みによって、自然治癒力が高まるのではないかと言われています。
心と体は一体なのですが、その一体化ぶりは想像以上です。
一方で、本当はなぜ起こるのか?というのは未知な部分が多いそうです。
研究によると、プラシーボと気づかずに服用──錠剤の場合も注射の場合もある──した人は、往々にして、痛み、心臓疾患や胃腸疾患、高血圧症状が和らいだと感じることがあるという。
一方でプラシーボは、ガンのような病気の治療には役に立たない。「病気に感覚的症状がある場合に効果が出るケースが多い」とスピーゲル博士は言う。
プラシーボ(偽薬)効果はなぜ起こるのか――専門家が究明に動くから引用
2.ゴールコンフリクト、コンフリクト効果(葛藤状態)
2-1.ゴールコンフリクト一言解説
複数の欲求が重なると、行動が決定できずに足踏みしてしまう状態。
☑これもしたい、あれもしたい。
☑これはしたいけど、あれは避けたい。
と思いながら結局何も始められない状態。
2-2.保育士として使える場面
行動に移せない場合、それを抑える何かが隠れている場合が多いです。
それが何か?を気づくことでコンフリクト状態から解放されます。
①言いたいことを言いたいけれど
②言うと自分の立場が危うくなるかもしれない、
とか。
言えない状態で②が分からずなぜか躊躇してしまうというのが、あまりよくない状態です。
原因を「自分を見つめて」はっきりさせることで、色々な悩みから自分自身を解放してくれます。
一方子どもの場合は葛藤状態があっても、大人から見たら何に悩んでいるか分かりやすいですね。
上手く描けないと
笑われるから嫌だ!
葛藤状態から抜け出す一歩を、「大丈夫だよ、一緒に描きましょ」みたいに背中を押してあげるのが理想的な保育者だと思います。
自分で答えを出せ!
と言いたいところだけど、出せるほど成長してる子どもなんてあまりいませんからね。
2-3.もっと詳しくゴールコンフリクト
目標や欲求が重なると、「時間がないという感覚」になることが心理学的に分かっています。
これしたい、これもしたい
と焦ることで精神的にストレスとなるからです。
コンフリクト状態(葛藤)のパターンは3つ
- 接近回避型〜AしたくないけどBしたい
- 接近接近型〜AもBもしたいけど選べない
- 回避回避型〜AもBも避けたいけど選べない
葛藤を解消するには
●やらざるを得ない状態にする
●冷静に考えたり知識を増やして選択する
●選んだら迷わない
がセオリーです。
3.ネオフォビア(新奇恐怖)
3-1.ネオフォビア一言解説
知らない、未知のものに対する恐怖を抱いてしまうといった心理現象。
今まででやってこれたのだから、基本的に新しいものを取り入れる必要はなく、新しいものは危険であるという本能からくるもの。
「慣れ親しんだものではないもの」への恐怖や不安感。
それから派生して、よくわからないものに対しての非難や否定につながることもあります。
3-2.保育士として使える場面
新しい取り組みをしようとする場合、
必要ありませんね
というドリームキラーは必ず出てきます。
職場で有効なものを提案して否定される場面や、夢を語って家族に反対されるとかも同じ。
ネオフォビアは本能的なものなので、そこを否定しようとするのは間違い。
そんな心理が人間ならある、と言うことを受け入れた上で対応しましょう。
時間をかけて説得するには、「変えることによるメリット」よりも「変えないことによる危険性」を使う、つまり恐怖には恐怖をあてがって説得するのが効果的かもしれません。
始めることに対してリスクを洗い出した上での話ですが。
子どもが尻込みしてるだけなら
「やりだしたらやる気が出る」心理を踏まえて、半ば無理矢理にでも一歩踏み出させてみるのも有効。
人見知りもこれなので、単純に接する回数を増やすとか、色んな所に連れ出すとか。
慣れてしまえばネオフォビアは消えていきます。
3-3.もっと詳しくネオフォビア
ネオフォビアはペット業界でよく使われる言葉です。
ペットは新しい環境に連れてこられると、餌を食べなくなったりします。
野性的なほど、新奇恐怖の傾向が強いとのこと。
リスクはそのまま生き死にに直結するので、当たり前とも言えます。
人間でも
☑幼児がなんでもかんでも怖い
☑年をとるほど保守的になる
人見知りや頑固さは裏返しで、新しいものへの恐怖が本能的にあるのです。
普通の人でも、見た目が怪しいものを食べるを躊躇しますよね。
反対に好奇心が勝ってしまい、なんでも進んでいく状態を「ネオフィリア」と呼びます。
neophobia 新奇恐怖のこと。今まで慣れたものとは異なる新奇な刺激に接した際,それを恐れ避けようとすること。野生動物に顕著であるが,それが家畜化されることでしだいに減少する。
これと対照的な,新奇な刺激に注目し接触しようとする行動も,人間の乳幼児や多くの動物でみられる。
広辞苑
4.テンションリダクション
4-1.テンションリダクションの一言解説
緊張が過ぎ去った後には緩んで無防備な心理状態になってしまうという現象。
4-2.テンションリダクションは保育者として心理誘導に注意
子どもに対してきつく叱った後にフォローのつもりで優しい言葉をかけるなどよくありますが、一種のマインドコントロールに相当するので注意が必要です。
「DVで殴った直後に優しくする」という構図と同じだからです。
叱られていた緊張感の強い状態から、解放されてほっとしているところにかける言葉には、誘導する力があることは知っておくべきです。
保育士なら慎むべき行為と言えます。
大人の思い通りに子どもをコントロールして、その子の成長にとって良いことは一つもないからです。
4-3.テンションリダクションは色々と使われている
和訳すると緊張の消滅
英語だとtension reduction
「緊張」のtensionと「消滅」のreduction
実は物を売り買いする世界でよく言われているもので、テンションリダクション効果と呼ばれています。
マーケティングにおける「テンションリダクション効果」は、「どの商品を買おうか迷う緊張感」を乗り越えて購入を決断した後に、緊張感がゆるんで「ついで買いしやすい、無防備な心理状態」になってしまうことといえます。
beehave
車を買った人に、ついでにカーナビもどうですか?割安感を出されるとつい買っちゃいそうですよね。
5.スノッブ効果
5-1.スノッブ効果の一言解説
みんなが持ってるからほしくないという感情。
多数派を嫌う心理効果と言えます。
5-2.保育士として使える場面
子どもというよりは、働いている大人の側に出てくることもあります。
保育業界で称賛されている人に対して感じる劣等感によって、「あの人の言うこと、ちょっとな〜」
特に根拠なく反発したくなる心理、経験ありますか?
劣等感はつまり、自分への焦りや思い通りにならないことでの不安感から出てくるもの。
人気や、社会的評価のあるなしにかかわらず、
●個人的に本当はどう思っているのか?
●もし人気がなかったとしたらどう思うか?
といった問いかけで本質や自分の心に気づくかもしれません。
5-3.もっと詳しくスノッブ効果
本来は物を売り買いするマーケティングに関連した心理効果で、バンドワゴン効果は反対の心理効果としてよく引き合いに出されます。
☑みんな持ってて欲しくなるバンドワゴン効果
☑みんな持ってるから要らないスノッブ効果
購買を決める場面では、どちらにも転ぶということ。
集団の影響を受けやすいというのが人間の性質です。
同じものが人によってバンドワゴン効果、スノッブ効果を引き起こしたという論文もあります。
消費者間ネットワークと購買行動:スノッブ効果とバンドワゴン効果
人と同じでも、違っていても感じる不安。
スノッブ効果は「特別なものがほしい」というよりは、「みんなと同じものが嫌」というネガティブなものです。
普遍的な心理ではなく個人的な背景があったうえで、「何か特別なものが欲しい」「人気者を嫌う」劣等感に裏打ちされた心の動きといえるかもしれません。
6.退行
6-1.退行の一言解説
成長途中で受ける葛藤に耐えられなくなって、安心できていた昔の自分に戻ってしまう現象。
赤ちゃん返りが有名で、人間の正常な防衛反応の1つです。
6-2.保育士と遭遇する退行
下に兄弟ができて親がかかりきりになり、構ってほしい不安解消で赤ちゃん返り。
保育士ならよく見ると思います。
あからさまに赤ちゃんみたいになるよりは、
くらいの退行が多いですね。
おもらしやオネショが増えたとか、心と繋がっている体に影響が出ることもあります。
そんな場合は安心感を日常の中で得ていけば、そのうちにもとに戻ります。
無理に甘えを突き放したり、「赤ちゃんみたいね」のように否定的な言葉掛けはやめましょう。
退行には赤ちゃんのようにカワイイものばかりでなく、「世話を焼いてもらって安心したい」があるので、気を引く問題行動と隣り合わせです。
- 乱暴さが目立ったり、
- 片付けをしなくなったり、
- 言葉が叫び声だけになってしまったり。
と受け止めるのが保育士に必要な知識と行動です。
6-3.もっと詳しく退行現象
退行は人間の通常の反応なので、「途中経過としての減少」として周りの人は受け入れる必要があります。
子どもが自立してしまった後に親が退行してしまう現象もありますが、目にする機会はないかもしれません。
●昔はお世話をしてもらって安心してた
●今は不安でいっぱい
無意識に安心していた頃に戻ってしまうわけです。
「赤ちゃん返り」の発生メカニズムについては、小さい子どもが無意識のうちにわが身を守ろうとする、一種の防衛反応であると考えられます。
母子分離や下の子の誕生にしても、小さな子どもにとっては大きな環境の変化であり、スムーズに対応することは難しい事態なのです。
何もしなくてもよい幼い頃の状態に逆戻りすることにより問題解決をしようとしているのです。
出典:「子育ての医学」馬場一雄著(東京医学社)
ちなみに、退行は幼児や子どもに限りません。
課題やストレスが過剰になると、その解決方法の一つとして無意識に大人がなる場合もあります。
会社で地位ある人も、強いストレス状態で、その意識が幼児的な思考状態に戻る現象。
それを解決しなくてもいい年齢まで低下すること)で心細くなり、依存的になってしまいます。
総合心理教育研究所
7.不安に関わる心理効果や心理現象まとめ
不安感は人間なら誰しも持つ本能的な感情です。
なのでそれに対抗するのでなく、まず受け入れることが必要です。
未知のものに対しての不安は特に根本的なもの。
見通しや見本を見せたり、教えてあげることで子どもたちの主体性や好奇心を不安よりも優位にできるはずです。
(ネオフォビア)
プラシーボ効果も「脳をだます」ことで不安を和らげることができます。
不安状態は時間だけが過ぎ、さらに焦りを生みます。
保育者が自分で抱えている不安については、漠然としたものではなくて言葉として明らかにはっきりさせることです。
それによって取り組むべき行動や課題もわかり、解決に向かうことができます。
(ゴールコンフリクト)
その時は自分の中の劣等感や不安感など、目を背けたいような内面を見つめることも必要になってきます。
(スノッブ効果)
他に保育者としては、
不安感と安心した状態を利用するような保育を慎むこと。
(テンションリダクション)
不安によって退行に伴って問題行動のようなものが出てくるけれど、受け止めること。
(退行)
「不安から開放され安心したい」は人間の基本的な欲求なので、逃れることはできません。
ならそれを知って自分だけでなく、子どもの持っている不安にも適切に対処できたらいいですね。
ありがとうございました
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本の紹介👇️
「子育ての医学」
普段何気なく接するのに良くわからなかった赤ちゃんのしぐさ、夜泣きやぐずりといった言葉では表せない赤ちゃんの訴え、幼児にしばしば問題になるおねしょやトイレ教育から最近話題のいじめ問題まで。
子供の成長に伴い起こりうる問題を網羅しており、医者として学者としての見地から「本当の育児について」の知識を十分に与えてくれる内容でした。
アマゾンレビューより一部抜粋
文中で紹介したリンク👇️
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