思い込みの心理など
人の判断基準や記憶は曖昧。
高いからよさそう、みんな使ってるからいい物だろう、はじめ怪しいと思ってたのにいつの間にか信じてしまう。
思い込みで記憶が作り変えられてしまうこともあり、犯罪心理学では「目撃情報はそのままでは信頼できない」という話も有名です。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
セラピストでもある私(プロフィール)(@jamgakudoツイッター)の視点から、
【思い込みや判断基準に関わる心理知識】
👆今回はこれについて、あなたにお話していこうと思います。
人間なら誰しも持つ性質が、昔から心理学として研究されています。
経験的に「こうなんじゃないかなあ」と思っているいることが、心理学者がちゃんと研究して「やっぱりそうなんだ」となったものは沢山あります。
何年も生きて経験を積んで後悔を重ねながら、または学びながら成長していくのは避けられません。
人生って
の連続ですよね。
そんなのを先に生まれて研究してくれた人達がいっぱいいるので、それを利用しないのは大きな損と言えます。
ただ難しい論文や、探せば見つかるけれど飛び飛びになった情報はなかなか使えません。
なので元東大理系研究者であり、心理学も大学で学んだ私ジャムが保育士に役立つ心理知識として記事をまとめることにしました。
思い込みの心理を逆手に取った手法も多くあるため、知識としては知ることでそれらにハマらない意味もあります。
記事最後には関連した心理効果を総括し、
日常的に気をつけたら確実に子どもにもあなたにもプラスになるようなまとめも書いているので、ぜひ役立ててほしいと思います。
↓保育士の使える心理学の知識はこちら↓
保護者対応虎の巻など保育者に役立つプレゼントを、期間限定で配布しています。
その中に心理シリーズを編集して一つにまとめた有料Note記事(予定)も無料で配布していますので、興味があればどうぞ。
1.アファーメーション
1-1.アファメーションの一言解説
幸せだと思いこむと、その通りになっていく強力かつ有効な思い込み心理
1-2.保育士として使える場面
保育士として子どもにかける言葉は、極力ポジティブな感じにしていると思います。
切り替えを促すためでも、
とかね。
何でもポジティブにとらえて生きているのは、幸せな状態。
プレッシャーにならない程度の期待を、本人に伝えていくのは自尊心を高める上で良いことだと思います。
1-3.もっと詳しくアファメーション
アファメーションは占いとかスピリチュアルとか、怪しいと言われている業界でよく言われています。
無意識にそれを実現する方向に
動きますよ。
みたいな。
スピリチュアルの人たちは他人には不明確な感覚だけで言っていて根拠がないのですが、似た心理効果はいくつかあって、実は理にかなっています。
●ゴーレム効果
ネガティブな発言をしているとその通りになってしまう
●ピグマリオン効果
人から期待されると能力が上がる
●リフレーミング
世の中はとらえ方次第
根拠のない自信といえばそれまでですが、ちゃんとしたゴールが明確で、目的思考が組み合わさると迷いもなくなりますね。
2.希少性の原理
2-1.希少性の原理の一言解説
限られているものほど価値を感じてしまう、人間の普遍的な性質。
実際に希少性がなくても、人がそう感じれば働きます。
2-2.保育士として使える場面
価値を最大限に感じてもらうために、あえて場面を絞るというテクニックが子どもをたくさん預かっている場では使えるでしょう。
例えば誕生会で年一度だけもらえるプレゼント。
裏を返せば年一度必ずもらえるものだけど、あえて希少性を明確に示すことで子どもたちの満足度が高くなります。
心を操作するみたいで嫌かもしれませんが、パフォーマンス的に示すのも保育士の腕の見せ所なんです。
限定性は使える心理と言えます。
2-3.もっと詳しく希少性の原理
希少性の原理の有名な心理実験があります。
社会学者のステファン・ウォーチェル氏の実験。
半数の参加者にはクッキーが10個入った瓶を渡し、もう半数の参加者にはクッキーが2個入った瓶を渡し、クッキーの味を評価してもらった。
すると、瓶の中のクッキーはどちらも全く同じものにもかかわらず、瓶の中に2個しか入っていないクッキーを食べたグループのほうが、10個入った瓶のクッキーを食べたグループよりも、クッキーの味に対する評価が高くなったという。
また、「他の人が食べてしまった」と告げて2個入りのクッキーを渡されたグループと、何も言わずに2個入りのクッキーを渡されたグループを比較すると、前者のほうがクッキーの味を高く評価したこともわかった。
sinceより引用
あなたも、言われなくても似たような経験あると思います。
期間限定、数量限定、初回限定など、主にモノを売っている場では多用されていますね。
3.バンドワゴン効果
3-1.バンドワゴン効果の一言解説
多くの需要があるものに、価値を感じやすいという心理。
3-2.保育士として使える場面
バンドワゴン効果は商品を売りたい人の良く使う手法ですが、保育では別の方面で利用できます。
人気だから、みんなやっているからという理由で一種の流行を生み出せたり、集団の団結や一体感を演出できたり。
集団の心理なので使い方を間違えると、集団に無理やり合わせようとする指導にも繋がってしまうので気をつけましょう。
3-3.もっと詳しくバンドワゴン効果
勝ち馬に乗るとか、みんな支持してるからいい物
予想通りの心理と言えます。
「バンドワゴン」とは行列先頭に居る楽隊車であり「バンドワゴンに乗る」とは時流に乗る・多勢に与する・勝ち馬に乗るという意味である。経済学・政治学・社会学などで遣われる。
ウィキペディア
反対の心理はアンダードッグ効果、
スノッブ効果も少し違いますが対義です。
- 人気だから乗る
- 人気だから違うのにする
これが同時に起こるという人間の複雑さがあります。
消費者間ネットワークと購買行動
スノッブ効果とバンドワゴン効果
桑島 由芙
4.ヴェブレン効果(顕示効果)
4-1.ヴェブレンの一言解説
高価・高級であることを理由に支持してしまう心理効果。
4-2.保育士として使える場面
子どもは金銭的な価値がよくわからないので、「これは数万円の価値があるものだから大切にするのだよ」みたいなことをいっても全く効果はありません。
ヴェブレン効果は、自分が確立できていない思春期以降に出てくる心理効果です。
だから大人と一緒の感覚で子どもにも効くだろうは間違い。
子どもに道理を教えるときは金銭的な価値を持ち出すよりも、
●通常の理由と、
●結果の「こうなるからこう」
を教えるほうがよいでしょう。
保育士自身は価値判断を間違わないように、必要な資材はなるべく安く手に入れましょう(^^)
いらないものは要らないですね
4-3.もっと詳しくヴェブレン効果
アメリカの経済学者ソースティン・ヴェブレンが、19世紀後半の著書の中で「有閑階級は顕示欲を満たすために高額商品を購入する」ことを衒示的消費(conspicuous consumption)と呼んだことに由来する。
有閑階級の理論↓
自己顕示欲を示すためだけに高いものを買う。
裏を返せば同じものでも安ければ買わない、つまり不用品だけど「高いから」という理由で買う。
売り手にとって利用したくなる心理効果ですよね。
他に価値基準がないので、ブランドや他人が価値があると評価していることに、自分ものっかってしまう。
低い自尊心や自分で判断できないので、人から評価されているものを考えなしに評価してしまう。
錯覚の心理とも言えます。
太宰治の、「芋粥」が有名です。
平安時代の身分の低い貴族「五位」が、正月にちょこっとだけ食べられる「芋粥」をたらふく食べたいという願いを高位の貴族が聞きつけ、大量に用意したらかえって食べられなくなったという話。
人間悪などいろんな示唆がありますが、ヴェブレン効果も少し入っている気がします。
5.事後情報効果(誤った記憶)
5-1.事後情報効果の一言解説
あることを経験した後に、それに関する情報を後から与えられたとします。
初めに経験した時に、後から知った情報をはじめから知っていたかのよう錯覚してしまう心理効果。
昔の記憶が作り変えられてしまうわけです。
5-2.保育士として気をつけたい場面
少しわかりにくいので例を出しますね。
① 何となしに人を助けたとします。
② 後からその人が、とてもかわいそうな人だと知ったとしましょう。
③ そこで、「かわいそうな人だから助けたんだ!」と記憶が改変されてしまうようなこと。
子どもの記憶は曖昧なのと、見ている視界も物理的に狭いですね。
だから子どもからの聞き取りのみで何が起きたのか正確に知りたい場合は、事後情報を与えないうちに聞き取りをした方がよいということ。
作り変えられた記憶は嘘をついてるわけではなくて、その子にとっては真実になってしまうのです。
後から「それは思い違いですよ」と説得しようとしても、かなり難しくなります。
だから事後情報効果がなるべく働かないように、気を付けたいところです。
また自分でも「なんであんなことしたんだろ??」
と考えることありますよね。
あとから考えて理由付けしようとした時に、後から知った情報を元に思い込んでしまう。
反省したくないことから都合よく逃げたり、言い訳にしてしまうこともあります。
それは自分の成長を鈍くする行為になるので注意。
5-3.もっと詳しく事後情報効果
犯罪心理学の世界では、目撃情報はそのまま信頼できないことが有名です。
ニューヨーク州で起きたレイプ事件の被害者は、6 枚の写真から構成されたラインナップから犯人を識別できるかどうか警察に初めて尋ねられた時,自信がないと答えた。
その後ラインナップによる識別を行い,のちに起訴されて有罪となる人物を選択した時も,彼女はその人物が加害者に「最も近い」と述べただけであったが,
最終的に彼女は公判で犯人は識別した人物に間違いないと供述した。だが彼女の識別は誤っており,有罪判決を受けた被告人は 16 年収監されたのちに DNA 鑑定によって無実が証明された。
目撃者の記憶を歪めるフィードバック - J-Stage
6.自己正当化のアイヒマン実験(ミルグラム効果)
6-1.ミルグラム効果の一言解説
危ない、違うと思っても自分の行為を正当化して続けてしまう心の動き。
6-2.保育士として使える場面
自分の判断基準がどこにあるのか?
人に作られた基準に従っているときには、判断を自分でしていないということになります。
- 価値基準は自分で納得すること、
- 定期的に疑問を持って考えること
違うことは違うという態度は、子どもを相手にする保育者に絶対必要な態度です。
そうしないと例えば
☑先輩が虐待まがいの行為、
☑または後輩保育士へのハラスメント、
「これが普通なんだな」
と容認し、職場として歯止めが利かなくなってしまいます。
6-3.もっと詳しく自己正当化
アメリカの心理学者ミルグラムが行った実験が有名です。
看守役が囚人役に電気ショックを与える実験をした際、看守役が権威的な人の指令に従って自分の行動を正当化し、エスカレートさせていったという事例。
看守役の行為が行き過ぎてしまい、実験中止になったそうです。
アイヒマンとはナチスのユダヤ人収容所の責任者で、冷酷で残忍な行為を戦後罪に問われました。
しかしアイヒマンは仕事に忠実なだけな一般市民、なぜこのようなことになったのか?の検証に行われた実験でした。
7.確証バイアス
7-1.確証バイアスの一言解説
自分にとって都合の良い情報ばかりを集め、「やはり思った通りだ」と反対する情報を無視した偏った判断をしてしまう傾向。
めったに起こらない確率を大きく評価してしまうこともあります。
7-2.保育士はラベリングに注意
子どものラベリングには保育士は特に注意で、
と思っていると、その通りのことばかり注目して
実際には問題のない時間がほとんどにも関わらず。
目が曇るとは、こういうことですね。
または大きなトラブルになっているのに、
「大したことない」という証拠を自分で集めて
「大したことないんだ」と思い込みたい心理。
または先輩の悪口を仲間とだけ愚痴的に話し、自分の問題には目をつぶって先輩だけが悪いと思い込んだりする。
〜バイアスと名前のつく心理効果は、冷静で中立な判断が必要になる保育士にとって特に知っておくべき事柄です。
7-3.もっと詳しく確証バイアス
確証バイアスは、思い込みの心理で代表的なものと言えます。
60代の主婦が、一緒に住んでいた娘を語る人物の詐欺被害に遭ったという事件がありました。
耳から入ってくる情報は限られていますから、彼女は瞬時に「娘かな」と思ってしまい、「何かへんだな」と思いながらも、結局は「きっと娘に違いない」とおカネを振り込んでしまいました。
それでも「振り込め詐欺」に遭う人がいる理由 東洋経済
この例からも冷静な判断をするためには、確証バイアスという人間の普遍的な性質を知っておく必要があります。
自分の都合の悪い情報を、無意識に受け入れたくない欲求に負けて判断力が低くなるということです。
普段は冷静なのに
- 不安や恐怖をあおられ
- 時間的切迫
などの心理的に追い込まれた変性意識状態(催眠状態みたいな感じ)で、バイアスの罠にかかる可能性がとても高くなります。
この気付きが大切です。
8.スリーパー効果
8-1.スリーパー効果の一言解説
信頼性が低い情報だったものが時間経過でうさん臭さが消えて信頼性が増してしまうといった心理現象。
8-2.保育士として使える場面
スリーパー効果は、新しいことを提案したいけれど上司が理解してくれない時に使える心理効果。
一度提案して細く長く情報を入れていくことで、情報源があなたからだけだったとしても、
それを考えたのが自分で真実かのように思い込んでしまう。
保育のICT化が進められていますが、年の多いパソコンにすら抵抗のある園長は渋りがち。
いつの間にか思い込んでしまう。
8-3.もっと詳しくスリーパー効果
スリーパー効果は、情報源がどこだったのかを忘れてしまう一方で、情報の内容は覚えているということに原因があるようです。
スリーパー効果は、米国の心理学者、カール・ホブランド(1912~1961)によって提唱されました。
時間とともに情報源の疑わしさが「眠って」しまうことにちなんで名づけられたそうです。
スリーパー効果は、日本語で「仮眠効果」「居眠り効果」と呼ばれることもあります。
studyhacker
怪しい情報でも期間をあけて何度も聞いてるうちに、「あっ、聞いたことある!」
あなたの信頼度が低くても、
☑情報にインパクトがあって
☑思い出しやすい内容
な場合、情報そのものに何度も触れていることによって信じてしまう効果です。
人の記憶は簡単に改変されてしまうという怖さのある心理現象なので、疑問に思ったら情報源がどこにあったかを調べる癖をつけるのがよいでしょう。
弥報 無意識の心理を利用した「スリーパー効果」で受注獲得!:実践のビジネス心理学①
9.固着のヒューリスティックス(係留と調整)
9-1.ヒューリスティックの一言解説
事前に与えられた情報を元に判断する思考パターン
9-2.保育士として使える場面
1000円を500円引き!今なら500円です。
安い!
↑簡単に言うとこれです。
同じことを言っても、印象が違いますよね。
仕事でも
と言うのと、
一時間でやりますと言って
印象操作といえばそれまでですが、こんなことが意外に人の心を掴むのに有効なのです。
9-3.もっと詳しくヒューリスティック
ヒューリスティックとは、自分の経験に基づいて物事を判断する思考パターン。
固着のヒューリスティック含めて4つあり、
● 代表性ヒューリスティック
代表的、典型的なイメージを過大評価。
例 外国人だから英語が話せる
●利用可能性ヒューリスティック
自分の見聞・口コミ・衝撃的な事件など、想起しやすい情報から確率や程度を判断。
例 車より飛行機の方が事故の起きる確率が高そうだ
●シミュレーション・ヒューリスティック
経験や先入観から考えた架空のシナリオで結果を推定。
例 風が吹けば桶屋が儲かる
経験則はパターン化することで判断にエネルギーがいらないのですが、反対に間違いも引き起こしやすいので注意が必要です。
どれも思い込みなのですが、固着のヒューリスティックについては、タイミングよく現れた情報に踊らされてしまうので特に注意。
子どもに伝える情報を、より印象的にするのにも使えるという意味で紹介しました。
思い違いの法則
10.保育士が知っておくべき人間が陥りやすい思い込みの心理
人の価値判断の基準は
☑あいまいで人気だから
☑ほかの人がそう思っているから
などの外部の情報に大きく左右されます。
(希少性の原理、バンドワゴン効果)
自分自身に判断基準がないと、人に操作されてしまう危険すらあります。
(ヴェブレン効果、ミルグラム効果)
また記憶自体が変わってしまうこともあり、しかも思い込みの記憶が正しいとして自分では気づけないこともあります。
(事後情報効果)
思い込んだことが正当だという理由ばかりを無意識に集めてしまい、否定的な情報を無視してしまう心理現象があるためです。
(確証バイアス)
主観ではなく客観的事実に基づいて判断できるためには、
●人間の記憶や判断基準があいまいなのを知る
●「自分が正しい」という思いを捨てる
●自分の判断に疑問を投げかける
ところから始める必要があります。
(スリーパー効果、ヒューリスティック)
思い込みは人としては避けられない心理効果で、それに踊らそれていることにすら気づかずに生活している人がほとんど。
人を育てる保育者として、自分の状態に気づくのも必要ですし、子どもや職場の状態を良くするためにも知っておくべき知識と言えます。
ありがとうございました
よければコメントなどいただけると嬉しいです👇️
本の紹介👇️
文中で紹介したリンク👇️
↓保育士の使える心理学の知識はこちら↓
保護者対応虎の巻など保育者に役立つプレゼントを、期間限定で配布しています。
その中に心理シリーズを編集して一つにまとめた有料Note記事(予定)も無料で配布していますので、興味があればどうぞ。