やる気やモチベーションに関連した心理効果
この記事ではやる気が出たり、逆にやる気がなくなってしまう心理効果を紹介しています。
子どもは色々と興味を持つけれど、それが持続するかどうか?
興味の移りやすい子には、大人の働きかけがとても大切ですね。
例えば子どもが自分から楽しんでやっていることに対して、大人が良かれと思ってご褒美をあげると、
せっかくの楽しみがご褒美目当てになり、つまらないものになったりします。
このような人間なら誰しも持つ性質が、昔から心理学として研究されています。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
セラピストでもある私(プロフィール)(@jamgakudoツイッター)の視点から、
【やる気やモチベーションに関連した、保育士が使える心理効果】
👆今回はこれについて、あなたにお話していこうと思います。
経験的に「こうなんじゃないかなあ」と思っているいることが、心理学者がちゃんと研究されて「やっぱりそうなんだ」となってるものは沢山あります。
何年も生きて経験を積んで後悔を重ねながら、または学びながら成長していくのは避けられません。
人生って
これを知ってたらな・・
の連続ですよね。
そんなのを先に生まれて研究してくれた人達がいっぱいいるので、それを利用しないのは大きな損と言えます。
ただ難しい論文や、探せば見つかるけれど飛び飛びになった情報はなかなか使えません。
なので元東大理系研究者であり、心理学も大学で学んだ私ジャムが保育士に役立つ心理知識として記事をまとめることにしました。
最後には関連した心理効果を総括し、日常的に気をつけたら確実に子どもにもあなたにもプラスになるようなまとめも書いているので、ぜひ役立ててほしいと思います。
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1.アンダーマイニング効果〜報酬でやる気がなくなる!?
1-1.アンダーマイニング効果の一言解説
もともとやる気があったことに対してご褒美や報酬を与えることで、かえってやる気をなくしてしまう心理効果。
やる気をなくすというよりは、報酬目当てになってしまうということ。
せっかく楽しくやっていたのに、ご褒美抜きでは楽しくなくなってしまいやる気がなくなります。
1-2.保育士として使える場面の例
せっかく自発的に興味を持ち、やる気をもって子どもが楽しんでやっていることに対して安易にご褒美を与えてはいけません。
やる気がもっと出ると思ってボーナスを出すと、それが目的になりかえってやる気をそいでしまう。
やる気や楽しさがすでにあるのなら、ご褒美ではなく努力や楽しさを認めるようなアプローチにとどめるべきです(エンハンシング効果)。
逆に変なことに興味を持ったときに、はじめはご褒美をあげて後からなくし、興味を失わせるという使い方も可能といえば可能かもしれません。
1-3.もっと詳しくアンダーマイニング効果
1971年、心理学者エドワード・L・デシの実験
①
24人の大学生をA、B2つの班に分け、どちらのグループにもソマパズルという当時流行っていたパズルを解いてもらう。
②
●Aのグループにはパズルが解けたら1ドルの報酬を出すと伝え、実際にその通りにする。
●Bのグループには何も言わないし何もしない。
③
どちらのグループにも、普通にパズルを解いてもらう。Aには報酬も与える。
④
一定時間経ったら試験官は離れ、その間に自発的にパズルを解くかどうか?を観察した。
↓↓↓
結果は・・
当時流行っていたパズルなので報酬なしのBグループは休憩時間にもパズルをやっていたのに対し、
報酬をもらったAの人は明らかにやらなくなったそうです。
レッパーの実験は幼稚園児相手
Aグループ
絵を描いたらご褒美をあげる約束をして、実際にご褒美をあげる
Bグループ
約束をしないけどご褒美をあげる
Cグループ
何も言わないしあげない
結果は↓↓
Aグループのお絵描き時間が減ったそうです。
内発的動機づけに及ぼす報酬の効果より引用
2.クレスピ効果〜ご褒美無しでモチベーションダウン
2-1.クレスピ効果の一言解説
ご褒美が減るとやる気がなくなるという効果。
ご褒美には、物や得になるような状態(特権など)も含まれます
2-2.保育士として使える場面
ご褒美目的で行っていたお手伝いだと、それがなくなったとたんにやる気がなくなってしまうのは、動物の本能なのでどうしようもないですね。
「やらないと怒られる」などの、罰で縛られていた場合も同じです。
やる気があったものに対してご褒美を出すと、その後もあげ続けないといけなり、
またご褒美に慣れてしまうため、レベルを上げざるを得ない未来が待っています。(罰も同じこと)
日常的に何度もあるようなことは、ご褒美と結びつけないほうが良いでしょう。
よくあるのが小学生くらいで学校担任がごほうびシールなどを導入した場合です。
翌年担任変更でそれがなくなり、子どもが路頭に迷っている姿を何度も見ました。
2-3.もっと詳しくクレスピ効果を解説
迷路の中で食べ物を見つけるなどの繰り返し実行されるタスクで、ラットの走る速度は、前の試行で得た報酬のサイズに比例することを発見しました。
タスクの完了時に前回与えられた食べ物の報酬が多ければ多いほど、同じタスクを完了しようとしたときに実行が速くなります。効果は逆にも機能します。
ラットが大きな報酬から小さな報酬にシフトしたとき、常に小さな報酬を受け取っていた対照ラットよりもゆっくりと走りました。
ウィキペディア クレスピ効果
経験的にも、他の条件全く同じなのに給料減ったらやる気出ませんよね。
動物実験で明らかになったというだけです。
3.エンハンシング効果〜称賛の言葉でモチベーションup
3-1.エンハンシング効果の一言解説
報酬目的ではないやる気がもともとある場合、
賞賛や認められることで、やる気がさらに増すという心理効果。
ほかの人が関心を示すことでも同様の効果となります。
3-2.保育士として使えるエンハンシング効果
すでにやる気がある子や部下に対しては物理的な報酬ではなく、
- 言葉による褒め
- 肯定すること
- 関心を示してあげること
これによって応援されている気分になって、さらにやる気が高まります。
張り付いてなくてもいいので、
- 「おっ、やってるね」
- 「これはなんだい?」
- 「いつも頑張ってるね」
などの言葉をたまにかけるだけでも違います。
「これ見て」と持ってきた時はなにか気になっても指摘するんじゃなく、「いいね」認めてあげましょう。
3-3.もっと詳しくエンハンシング効果を解説
エンハンシング効果はその行為自体が目的、例えば勉強して楽しいとか、遊んでいて楽しいなどで満足している場合には、特に外部からの仕掛けはいらないということです。
まだそれがない場合は、本人が納得して「やらされている感」ではなく、
自分でやりたくなるような仕掛けを、物や競争などの報酬でない、説明などで感じてもらうことが有効です。
学生の自律志向により学習意欲が高まるように,教員に期待される役割ついて述べている。
①学習に価値が見いだせる説明をする
②叱責せずに寛大に接する(学生が否定的で不快な感情を教員に投げかけても,それを教員は受け入れること)
とした。
また細川は,「目標達成したときに,有能感が得られそうだという見通しを持って,自由意志を尊重してくれていると感じられる。
動機づけ理論と学生指導への応用 - 佛教大学
4.ピグマリオン効果〜褒めた方向に伸びやすい心理
(ローゼンタール効果、教師期待効果)
4-1.ピグマリオン効果の一言解説
周りの人から期待されていると、それに応えようとするので能力が上がるように見えるといった効果。
4-2.保育士として使える場面と気をつけること
優秀だなどの能力面だけでなく、「あなたは本当は優しい子だね」と伝えることでその方向に動いたりします。
ただし言葉だけで言ってもダメで、普段からの関りがベースにあってこそ効果があるものです。
言われている気がする
こんな風に子どもが感じたら「信用できない人に言われると、逆に反発するブーメラン効果」という心理が働く可能性すら出てきます。
しかし高すぎる期待は本人の負担になるので、意図的に使うにとどめておいたほうが良いと思います。
本当は期待してないけど、「こうなったらいいな」と考えて意図的に褒める。実はあまり期待してないのは感じさせない。
↑こんなテクニックが必要になります。
ひいきしてないけれど、子どもにはひいきされてるように思わせるテクニックです。福祉現場では常識ですよね。
個人的な関わりでなくても、全体の雰囲気として期待されてるのが分かると、やる気が出たりするので使える場面もありそうです。
4-3.もっとピグマリオン効果の解説
ピグマリオン効果は教育現場などで使われることが多く、
教える立場の教師が生徒の知識向上や意欲向上を期待した態度をとり続けることで、実際に生徒が期待に応える行動をする、というものです。
ピグマリオン効果は本当なのか?
1963年ローゼンタールとフォードが大学で心理学の実験で、学生たちにネズミを使った迷路実験をさせるのに、ネズミを渡す際に、
・これはよく訓練された利巧な系統のネズミ、
・これはまったくのろまなネズミ
といって渡したところ、その二つのグループの間で実験結果に差異が見られた。
前者のネズミを渡された学生たちは、ネズミを丁寧に扱い、後者のネズミを渡された学生たちは非常にぞんざいに扱い、その両者のネズミへの期待度の違いが実験結果に反映されたものとローゼンタールは考えた。
ウィキペディア
悪いことはありません
5.宣言効果〜宣言するとやる気が出てくる
5-1.宣言効果の一言解説
目標などを周りに宣言すると、その通りに動きやすいといった心理効果。
自分でやる気や意味づけができている場合だけ有効で、自分自身に言い聞かせるために使える現象です。
例えば半強制的に紙に書かされて発表させても、プレッシャーにしかなりませんよ。
5-2.保育士として使える場面
ある程度大きくなった子に、自分で目標を考えてもらって発表してもらう程度がちょうどいいでしょう。
あくまで自発的にやってもらう必要があります。
約束的に「~をしません」といった物を紙に書かせても無意味で、自己肯定感を下げる紙を自分で書かせていることになるのでやめましょう。
しかも言わせることで目標達成できなくなるという心理実験もあります。(すぐ下の5-3で解説)
子どもの場合、大人が書く誓約書なんかとは根本的に違いますね。
小さい子にはあまり使う場面がないと思いますが、保育者が自分で短期目標を立てて「明日〜します!」と周りに言って自分を奮い立たせるなどの使い方もできます。
効果が薄いようです
5-3.宣言効果をもっと詳しく解説
宣言効果は自分で言うことで、目標達成のためのモチベーションを自分であげる効果です。
ただしこれは主観での満足であって、実際には目標達成から離れてしまうという心理実験もあります。
①163人の学生に、「達成したい目標」を書いてもらう②無作為に学生をAチーム・Bチームの2つに分ける。
③Aチームは、その目標をみんなに宣言する!一方、Bチームは目標を誰にも話さない
④その後45分間自由時間を与えて、目標達成に向けた作業をしてもらう(途中でやめても構わない、と伝えられている
マジで達成したい「目標」は誰にも言うな!
この心理学実験により、目標を人に言うと達成率が低減することが示されています。※原文はリンク切れでした
こんな話もあります。
・偉い人(尊敬できる人)に宣言したグループ
・どうでもいい人に宣言したグルー
に分けて目標達成率を調べたところ、尊敬できる人に宣言したグループは目標達成率が跳ね上がったのに対し、どうでもいい人に宣言したグループは変化なしだった。脳科学×心理学で読み解く人生のガイドライン
つまり「この人たちからの信用を失いたくない!(嫌われたくない)」という動機がしっかり沸かなければ、パブリックコミットメントは効果を発揮しないのである
本当に達成したい目標を宣言するには、信頼を失いたくない人に少し打ち明ける程度がいいかもしれませんね。
6.ロミオとジュリエット効果〜障害があると燃える
6-1.ロミオとジュリエット効果
困難や障壁が適度にあると、やる気が出て燃えてくるといった心理効果。
恋愛についてよく言われる効果で、逆にその障害が取り除かれると途端に冷めてしまうことも。
一時的な効果とも言われています。
禁止されていることには興味がわいてしまう(カリギュラ効果)天邪鬼な人間の性質といえます。
6-2.恋愛が主だけど・・
何かに反対されたことで、こだわってしまう事ってたまにありませんか?
やる気が出てるのは単に「反対されているから」じゃないか?
自己観察が必要な場面があります。
あとから考えてみると、「なんであんな事にこだわってたんだろ」
子どもは特にそうで、「これしかない、残り一つ!」というような言葉に反応してしまうのは人間の性質みたいですね。
それを逆手にとって注目を集めることや、難しいけれど頑張れば達成可能なことを仲間で挑戦することで一体感をもてたりします。
何かにこだわっている場合には、
場面切り替えを
大人が助けてあげるのも
必要です。
6-3.もっと詳しく解説
人間の天邪鬼ぶりを示す解説を見つけたので引用します。
不倫や法律で禁じられている関係など、許されない恋愛をしている相手に対して「その恋愛はやめた方がいい」と助言した場合、かえってその心を燃やしてしまうこともあります。
「ロミオとジュリエット効果」は、第三者からすると、非常に厄介な心理現象だといえます。
ビジネス心理学
障壁があるほど燃え上がるか?
そんな訳はなくて、無理な限界を感じると諦めます。
大きすぎる困難にはロミオとジュリエット効果は効きません。
7.バイスタンダー効果(傍観者効果)〜他に人がいると引っ込んでしまう傾向
7-1.バイスタンダー効果の一言解説
周りに人がいると、率先して動けなくなる心理効果。
能力が自分より高い人がいると、より強化されます。
「責任は自分にはない」と、傍観者の立場を選んでしまうという心の動きです。
7-2.バイスタンダー効果は小学生以上で忘れてはいけない
いじめなどの現場で起こりやすい心理効果です。
教師が
と単に伝えても、高学年くらいからは思った通りの報告が来なくなります。(この要素はバイスタンダー効果だけでありませんが)
これは人間の性質なので問い詰めたり、期待外れを残念に思っても無意味です。
大人でも、大勢の中で率先して動けるほうが珍しいですね。
それよりは
人間って動けなくなります。
でもそんな時にこそ、
自分から動ける人は
素敵だと思います
↑こんな感じで、価値観を変えていくアプローチをしていくと良いかもしれません。
7-3.もっと詳しく傍観者効果を解説
傍観者効果の原因は
●他者が行動してないのを見て、緊急性でないと思う
●他者と同調すれば責任や非難が分散されるだろう
●行動して目立った時の周りからネガティブな評価を心配
バイスタンダー効果について、有名なキティジェノーヴィーズ事件があります。
深夜に自宅アパート前でキティ・ジェノヴィーズ(1935-1964年)が暴漢に襲われた際、彼女の叫び声で付近の住民38人が事件に気づき目撃していたにもかかわらず、誰一人警察に通報せず助けにも入らなかったというものである
(中略)
「都会人の心が冷淡だから」誰も助けなかったのではなく、「多くの人が見ていたために」誰も助けなかったことがわかった。
ウィキペディア
救急救護の研修では、倒れている人を助けようとするときに、
「必ず指名して通報を頼む、AEDを持ってきてもらう」などを講師が教えてくれます。
誰かやるだろうと思って、結局誰もやらないからです。
8.ホーソン効果〜特別扱い感でやる気が出る心理
8-1.ホーソン効果の一言解説
特別扱いされると、成果を出そうとして頑張る現象です。
された特別扱いを維持しようとしたり、相手の期待に応えようとする心理的な動きといえます。
ピグマリオン効果は外部からコントロールされてる感じですが、ホーソン効果は自分で感じる効果という違いがあります。
8-2.保育士として使える場面の例
これも人間の普遍的な性質なので、良い悪いはありません。
あなたも、自分だけ上司に頻繁によい意味での声を掛けられると感じれば、悪い気はしないと思います。
それが意図的であったとしても、ぶっちゃけ関係ありませんよね。
あなたの気分次第なんですから。
あなたが職場で立場が上がった場合にも使えるし、子どもや保護者に対しても使える技術です。
実際には平等に接していても、特別に接していることを相手が感じてくれればホーソン効果は表れてきます。
8-3.もっと詳しくホーソン効果を解説
アメリカのウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で実施された4つの実験のことをいいます。
1924年から1932年まで8年もの間実施され、さまざまな条件下で労働者の生産性の変化についての仮説を立て実証が行われました。
明日の人事 ホーソン実験とは
この実験結果は、他者との関係や感情などの要因で能力が変わるというものでした。
そこから派生してホーソン効果は「注目されることで、期待に応えたい思いから能力が上がるもの」とされています。
多くの企業や団体で上司が部下に気遣い、メンタルヘルス向上を図っているのは、自主的な頑張りを促すためのホーソン効果を狙ったものとも言えます。
9.やる気とモチベーションアップに関して保育士が知ってると役立つ心理知識まとめ
やる気を最大限生かすには、もともとやる気のあった状態では見守り賞賛の言葉かけにとどめ、ご褒美などの物理的な報酬に安易に結び付けないことがポイントです。
特に物理的な報酬は、一度あげだしたらなくすことはできなくなるので、慎重にという話です
(クレスピ効果)
また決まった目標があるなら「適度な困難さ」を演出することで燃え上がるかもしれません。
集団でなにかを目標にしようとした場合には、同一集団内で競わせるよりは、集団でありつつも個人に注目して特別視している感じを出すこと。
個別に声をかけて認めてあげる行動が効果的だと思います。
それによりモチベーションを保ち、人がいっぱいいると動けなくなる心理を跳ね返して(バイスタンダー効果)、自主的に行動してくれるかもしれません。
自分でも人間として持って当然の心理を知り、気をつけることができます。
ありがとうございました
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