保育士のやれる医療行為っぽいもの
保育士のあなたの状態は
・保育士のやっていい医療行為っぽい範囲が分からん
・保護者にお願いされたならやってもいいんじゃ?
・どの薬なら大丈夫なのかよく分からない
こんな感じでしょうか?
私もはじめの頃よく分からず、教えてくれる人もおらず、消毒や湿布とかも個人の感覚でやってたことあるのでよく分かりますよ。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
セラピストでもある私(プロフィール)(@jamgakudoツイッター)の視点から、
【保育士の知っておくべき薬の扱いや責任範囲】
👆今回はこれについて、あなたにお話していこうと思います。
結論は処方された薬を
- 医者が保育士が補助していいと許可をして
- 保護者から同意の上、依頼されたら
保育士は保育中に飲ませたり塗ったりして良い。
けれど、園によってはリスクを考えて一律に断るところもあります。
また薬か薬じゃないかもわかりにくく、保護者とのトラブルになりやすいポイントです。
保育士個人としてもこの辺りの基準をハッキリと知っておかないと曖昧な対応になり、簡単に保護者からの不信感に繋がります。
だからちゃんと知っておき、園として取り決めはあっても個人としても説明できないといけません。
この記事に来たあなたは、最後まで読めば大丈夫になりますよ。
- 1-1.責任範囲の明確化が大切
- 1-2.できるできないの明確化も必要
- 2-1.許されている範囲は限定的
- 2-2.医療的ケア児対応やエピペン
子ども対応の関連スキルの記事
1.処方された錠剤はよくて市販の塗り薬はダメとか、保育士の基準が曖昧だと保護者はもっと分からない
保育士のやっちゃ駄目な医療行為は法律で明確になっています。
それっぽいけれどやっていいものも、厚生労働省が書いてくれています。
その範囲なら「やっても問題ない」のですが、「やらなくちゃいけないものでもない」んです。
また医療行為でなくても、保育所は親の代わりに預かっているので、特に体に変化を加える行為も勝手にやれません。
極端な話、勝手に散髪したらヤバいですよね。
そう、分類としては3つ。
①医療行為にあたる禁止事項
②医療行為には当たらないとされているもの
③特に定めないけど体に変化を加える行為
実は迷ったり保護者が区別できないのは、②の一部とほぼ③に相当する部分。
園が医療行為だと思っているけど、実は薬でもなんでもないものを「薬だと思いこんで」
みたいな間違った説明をすると・・
知ってる保護者は不信感持つし、知らない保護者はなんで駄目なの?不満を持つ。
というところで、ハッキリとできるできないと、何がダメか?を理解しなくちゃいけません。
施設というよりは一般保育士の話です。
よくある保護者の不満↓
医者の意見書持って投薬お願いしたら「医療行為だからできません」って断られたのに、虫よけを園で使うから同意書書いてといわれました。
なんで投薬してくれないんでしょう?
教えてグー
(ちょっと変えてますが、似たような感じです)
1-1.薬の扱いなどは責任範囲の明確化が大切
何がダメで何がいいのか?
保護者の感じることは違うのと、保育士個人も理解してないと職員間での温度差が出てきます。
塗ってくれるでしょ
塗ってらいいのか分からないわ。
自分にも薬がつくから
やりたくないわ
手間もかかるし保管もしとかなきゃいけない。
こんな温度差ってよくあります。
医者の処方された薬で、分量など間違いようのない薬を飲ませたりは医療行為ではないとされています。
だけど軟膏とか持ってこられると、実際には分量が分からなかったりしますね。
「医者の投薬指示書があり、保育士の判断要素が全く無い場合だけ対応します」
とか。医者の指示通りにやれば、園の責任にはならないようです。
一方で親が持ってきた薬を適当な感じで
みたいのを安易に引き受けて、塗りすぎたりすると
言ってないわよ!
が始まる可能性があるので同意書なんかが必要になりますね。
(※薬の場合は、医者の許可が必要になります)
要は責任を明確にするのが必要ということで、保育施設は「許可された行為のうちで、言われたとおりにやれば、責任を取らないものだけ引き受ける」のが前提です。
1-2.処方箋はできるけど、園ではできないなど明確化も必要
医療行為っぽいけれど実は許されてることは、人情的に"本当はやれるんだからやってあげたい"って思っちゃいますよね。
仕事で子どもを仕方なく預けてて、保護者ができなくて困ってる。
たいした手間でもないしできる場合、同意書をとって行っている施設もあります。(4章)
ただ保育園だと完全に子どもは守る対象なので、受けるからには"やる責任"を引き受けることになります。
また確実に手間が増えるのは事実。
規模の大きい園だと連携不足からの、ミスにつながるリスクも上がります。
また保育士間でも、、
●やってあげたいと思う人
●家で朝晩飲ませて来られないのか?と思う人
●なんで引き受けた?と面倒に思う人
だから施設のルールを作っておいて、はっきりさせておく。
また保護者にもちゃんと分かるように、"聞かれたら答えるじゃなく"先に知らせておく。
現場保育士としても、できるできないの境界線と理由をちゃんと理解しときましょう。
昔私が働いていた学童クラブで、別の支援員が保護者の依頼から安易に「アトピーの薬をこちらで塗る」判断を相談なく了解し、その時には別室でマンツー対応。
当時は医療行為の認識も曖昧で本当にやってよかったのかも疑問が残り、また人手がない中で厳しい状態を一年間強いられました。
リスクを考えたり、過去に事故があったりして、「できるけどやらない」と引き受けない園も少なくありません。
【福祉マインドって自己犠牲?】保育士は「子どものために」無理しない
2.薬の塗布などで許されている医療行為の範囲
この章では保育士でもできる、やる可能性のある医療行為らしきものについて挙げています。
根拠は、
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)
(平成17年7月26日)
2-1.医療行為ではないとされている、保育士のできる範囲
●腋の下か耳、非接触など体温測定
●動脈血酸素飽和度を測るための、パルスオキシメータを装着
●軽微な切りきずや火傷などの、ごく簡単な応急手当て
●汚くなったガーゼの交換
●普通の範囲の歯磨き
●通常範囲の耳掃除
●病気じゃない普通の爪を切る、ヤスリをかける
●医者の指示通りの投薬で言われた以外の配慮が要らない時
(点眼、湿布、一回分が一袋になってる薬を飲ませるなど)
●ストマ装具のパウチにたまった排泄物を捨てる
(肌に接着したパウチ除く。)
●市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸をする
●自己導尿補助のカテーテルの準備、体位の保持など
特に重要な注意書は👇️
医師、歯科医師又は看護職員が確認し、免許を有しない者による医薬品の使用の介助ができることを本人又は家族に伝えている場合に、
事前の本人又は家族の具体的な依頼に基づき行うことができる。
↑保育現場だと、本人じゃなくて保護者ですね。
医者は「その薬を素人が使っても、書いてあるとおりにすれば問題ないか?」を判断して許可を出します。
その時点で、「処方箋の書いてあるとおりに投薬補助する限りで」責任は医者に移りますね。
(※指示通り投薬補助しなかった場合は園の責任になるのは当たり前な話。引き受けたあとのリスクはここに出てきます)
ちなみに軽微な怪我の手当でよく使う絆創膏やガーゼは「意医薬品ではなく」、一般医療用品の範囲。要は薬じゃないということです。
医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)
(平成17年7月26日)
以上、やろうと思えばできる行為です。
つまり通常家庭で日常的に家でやってるようなことは、
- 保育士など第三者がやっていいと医者が許可した上で、
- 同意や親からの依頼があれば
保育所でもできるってことですね。
医療行為一覧なんか調べたら200とか出てきますが、それに比べたらほんの一部分。
ですが日常的には上の医療行為でないとされている項目で、実はだいたいカバーできてるんですね。
2-2.医療的ケア児の受け入れやエピペンは医療行為でない
エピペンや救急救護については、一般的に医療行為ではないとされています。
特に学校の教職員、保育士や救急救命士については緊急時はエピペンをためらわずに打つことが勧められています。
またそれらの職業でなくても、偶然居合わせたような場合には、人道的な立場から打っても大丈夫です。
事故現場に居合わせて救命活動をするのも同じとのこと。
また保育所や学童クラブでも、ストマ交換などの医療的ケア児は受け入れの方向へ進んでいます。
元々ストマ処理は、2章で書いたとおり医療行為から外れてますしね。
手間や職員のスキル不足などから断っていた施設も、今後は受け入れる方向で社会が変わってきています。
また保育士でも、認定特定行為業務従事者の研修を受け、登録された人であれば、喀痰吸引や経管栄養も実施できるようになります。
認定特定行為業務従事者の募集はこんな感じ↓
3.医薬品と類似品の違いで扱いが違うのは分かりにくいポイント
一般的に薬をどうするか?保育所では迷うポイントですね。
錠剤はまだしも粉薬はどうとか。
ですが迷いポイントはそこではなく、
薬かどうか?をまず気にすべき。
医薬品には一類、二類、三類、医薬部外品などの表示があります。
処方される薬はのは一類〜
売ってるのは二類〜
ここで医薬部外品は化粧品と薬の中間。
分類的には薬じゃないので、使う場合にも医療行為には入らないのです。
絆創膏とかは一般医療用品、医薬品ですらありません。(怪我の手当は医療行為っぽいですが、軽微な手当は2章で許されてます)
けれど体に変化を加える行為。絆創膏でも同意を取って慎重に使ってる施設もあります。
一方で市販薬でニ、三類の医薬品を使おうとするのは「医者の指示のない薬の投与」になるため、2章で書いた医療行為にあたり禁止事項となります。
ほとんど「医薬品」
の表記がありますよ。
昔はスルーされてましたけどね。
ただ市販薬で処方されたものでないとしても、医師の指示書があれば問題ないようです。
アロマオイルみたい虫よけは医薬部外品が多い。
パッチテストで同意を取って使ってるのはこちらです。
保護者にもこの辺を伝えたら理解してくれますが、ややこしいので突っ込まれたとき用に知っておくだけでもいいと思います。
ただ、常識的に考えても薬じゃないなら無制限に、全部勝手にはできるわけないですね。
医療行為じゃなくても、傷害罪にあたる可能性が出てくるためです。
ひと昔前は問題なかったフェイスペイントや爪切り、散髪なんか分かりやすくNG。
子どもが喜ぶからと言って手の甲にキャラクターの絵をペンで書くとかもダメ。
保育士を長くやっていると、そのへんの常識が世間とずれてくるので気をつけましょう。
【保育園余りの時代】に、保育士は自分だけの特殊スキルを磨こう
4.実際に同意を取って取り組まれているケース例
医療行為は同意をとってもできませんが、2章で書いてる許されている範囲だとやってくれる園も多くあります。
ただし処方箋を外部の人が補助していいというのは
- 医者の許可
- 保護者の依頼
これが必須なので、医者からの投薬指示書を書いてもらうのが普通。
園に看護師がいて
みたいのも保護者の同意があれば問題ないようです。(状態の確認していい人に看護師も含まれているため)
似てるけど別の話として、例えば虫さされを防ぐ薬じゃない市販防虫スプレーは医療行為ではないけれど、「体に変化を加える行為」
やはり同意書を取ったり、事前にパッチテストをしてもらって園で用意したものを使う。
こんなケースも少なくありません。
薬か薬じゃないか、4章でお話したように分かりにくいので、
"医薬品ではないこと"を突っ込まれたら説明できるのが、処方箋投与を断ってるような場合は必要になります。
5.保育士の処方された薬の扱いなどのまとめ
いかがでしたか?
医療行為っぽくても許されていて、保育士がやれることは意外に少なくありません。
家庭で保護者がやれる程度のことはやれる、と思って良いくらいです(2章)
処方箋に関しては
- 医者が許可をして
- 保護者から依頼されたら
保育士は保育中に飲ませたり塗ったりして良い。
というわけです。
けれど「やらなくてはいけない行為ではない」のも事実。
園によってはリスクを考えて一律に断るところもあります。
また薬か薬じゃないかもわかりにくく、保護者とのトラブルになりやすいポイントです。
別件を「医療行為」として断ったけど、薬っぽい防虫スプレーは使えるとか、保護者は分かりません。
このあたりの分類は知っておくほうが良いでしょう。
(3章)
ありがとうございました
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