人や子どもを評価するときに働く心理効果
泣いてる子を見て「弱い子を味方しなくちゃ」
一見しただけでこんな心理が働くのが人間。
泣いてる子が散々好き放題やって、反撃をちょこっと受けて泣いていたとしても。。。
人を評価したり判断するときに、主観で判断するわけですが、その判断基準には様々な心理効果が働いてしまうので、目が曇りがちです。
経験20年の理系保育士
ジャムです。
セラピストでもある私(プロフィール)(@jamgakudoツイッター)の視点から、
【人や子どもを評価したり判断するときの、保育士が知っておくべき心理効果】
👆今回はこれについて、あなたにお話していこうと思います。
人間なら誰しも持つ性質が、昔から心理学として研究されています。
経験的に「こうなんじゃないかなあ」と思っているいることが、心理学者がちゃんと研究して「やっぱりそうなんだ」となったものは沢山あります。
何年も生きて経験を積んで後悔を重ねながら、または学びながら成長していくのは避けられません。
人生って
の連続ですよね。
そんなのを先に生まれて研究してくれた人達がいっぱいいるので、それを利用しないのは大きな損と言えます。
ただ難しい論文や、探せば見つかるけれど飛び飛びになった情報はなかなか使えません。
なので元東大理系研究者であり、心理学も大学で学んだ私ジャムが保育士に役立つ心理知識として記事をまとめることにしました。
記事最後には関連した心理効果を総括し、
日常的に気をつけたら確実に子どもにもあなたにもプラスになるようなまとめも書いているので、ぜひ役立ててほしいと思います。
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1.フォールスコンセンサス
(総意誤認効果)
1-1.総意誤認効果の一言解説
世のほとんどの人は自分と同じ意見や考え方だろう、自分が世間一般的なのだという心理。
自分こそが常識人であるという思い込み。
自分は異物だと考えると押し寄せてくる不安に対抗するための無意識の心理といえます。
1-2.保育士として気をつける場面
冷静に観察していると、理不尽な要求してくる保護者の中にはフォールスコンセンサスに陥っている人が一定数います。
それを正そうと考えるのは、深く長い付き合いを覚悟しなければいけないので危険といえます。
表面上は受け入れつつ、受け入れられない部分の落としどころを探る方向がよいと思います。
保育者としては先輩になって新人指導をしているとき、
教えたらすぐできるように
なるでしょ。
自分が失敗したことないなら、なおさら相手にかける期待が知らずに大きくなってしまいます。
期待が大きいというのは、期待外れへの反動が高いのを意味してます。
そして失敗した新人には、ネガティブな言葉をかけやすくなるお決まりのパターン。
はじめは頑張るけどできない。
新人保育士が自分を自分で責めて落ち込むまでがセット。
元をたどれば、先輩保育士のフォールスコンセンサスから来る相手への期待値が原因です。
また「これはこう」と疑問を持たず、「私が正しい」
子どもの主張を聞かずに一方的に対応する保育者など、気をつけたい場面はたくさんあります。
1-3.もっと詳しく総意誤認効果
「フォールスコンセンサス」という心理効果は、1970年代にスタンフォード大学の社会心理学者リー・ロス(Lee Ross)が人々の認識の調査結果から提唱したものです。
リー・ロスは学生にサンドイッチマン(体に広告看板をつけた人)になってほしいと依頼する実験を行いました。
その依頼を「承認してくれた学生」は、「拒否した学生」よりも「他の学生がサンドイッチマンになってくれると思う」と回答した比率が高いことを明らかにしました
BeeHave
自分こそ多数派だと思いこむことで、「自分が正しい」。
さらにそこから「間違っている少数派は攻撃や排除しても良い」へ簡単に変化するため、人間の傲慢さの元になるような心理とも言えます。
2021年のコロナ騒動にて人のストレスが高まったとき、「〜してないのは悪だ!」みたいな感じでよく出てきた感があります。
と思い込んでしまうのは
人間の性質みたいです
2.寛大効果
2-1.寛大効果の一言解説
良い面を強調し、好ましくない面は大目に見てしまう評価の仕方。
早い話が相手をよい人だと基本的に思っていると、その通りになるように事実をゆがめてしまうということ。
2-2.保育士として使える場面
人を評価しようとしたときに、寛大効果が働いて歪んでしまうことがあるので注意。
「この人はできるはず」と期待していると相手にとってプレッシャーになってしまうこともあります。
例えば相手が子どもの場合、
●「この子はこんなことをしないはず」
→ 甘い対応になる。
●「この子はダメね」
→ 厳しい対応になる。
気を付けなくてはいけませんね。
2-3.もっと詳しく寛大効果
確証バイアスのように、「そう思っている通りの証拠を集める傾向」からくる心理効果。
人をよく思うのになんの不都合が?
と思うかもしれませんが、DVで暴力を振るってくる相手へ「この人は本当は優しいはず」みたいな思い込みから許してしまうなど、不具合も多く生みます。
自分と比べて他人をよく思うのも寛大効果。
他人がすごく見える反動で、自信喪失に繋がりかねません。
寛大効果が働いているということは、適正に評価ができないと言う事です。
似たところでは寛大化効果というものがあります。
これは「人を評価しようとした時に、全員に高評価をつけがち」というもの。
人を評価する事にはストレスがかかり、低評価を付けることで自分に対して悪い印象を持たれるのではないか?
などの心理が働くことで起きる現象です。
人間関係の問題から「負い目」を感じる人も少なからず存在します。
こうしたことが起こると、評価対象者全員が「高い評価」になってしまうということもあり得ます。
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3.ゲインロス効果
3-1.ゲインロス効果の一言解説
よいと思っていた人の評価が下がっていくと、初めから低評価の人よりも嫌われてしまうような効果が「ロス効果」
はじめは低評価だった人が思いがけず成果を上げると、初めから高評価だった人よりも高い評価を受けやすくなるようなのが「ゲイン効果」
3-2.保育士として使える場面
人への期待が絡んでくると、本人は何も変わっていないのに対して、見る人の期待から評価が変わってしまう、迷惑な心理効果。
不良がたまにいいことをすると、急に印象が良くなるみたいなものです。
悪い評価が上がる分には害はないけれど、「できるだろう」と期待していた人ができないと不当に低評価になりがちです。
職員集団の中で新人を指導する立場の人などは、陥ってはいけない心理効果ですね。
3-3.もっと詳しくゲインロス効果
はじめから最後までずっと褒めてきた人、はじめは否定的だったけど途中から褒めてきた人などの印象がどんな風になるか?
こんな、よくありそうな実験がされたそうです。
【実験結果】
好感度の高い方から下記の順になった
③ 獲得(ゲイン)条件(最初は評価が悪かったのに良くなっていくパターン)
① 肯定条件(評価がずっと良いパターン)
② 否定条件(評価がずっと悪いパターン)心理資格ナビより引用
④ 損失(ロス)条件(最初は評価が良かったのに悪くなっていくパターン)
子どもに限らず、人を評価する場合にはこんな心理効果が働いてしまうので、正当な評価なのか?疑問を持つことが必要になります。
4.アンダードッグ効果
4-1.アンダードッグ効果の一言解説
劣勢支持といわれる心理効果。
事実などではなく、「負けそうだから」「弱そうだから」といった理由だけで味方をするといった行動に結びつく
4-2.保育士として使える場面
子どもだと正義感から「泣いている方を味方する」という行為がよくみられますね。
ただ泣いている方が原因を作っている場合、その事実を伝えても味方をしている子はなかなか納得しません。
弱いものを助けようとした心意気を肯定するため、声かけに注意が必要です。
保育者としても、子ども同士のケンカで一方が泣いているような場面。
泣かせている方が乱暴な態度を取っていたら、印象的にも泣いてる方の味方をしたくなりますね。
しかしそこはアンダードッグ効果が働いていることを知り、冷静な状況判断がいるところ。
泣いてる子どもの方に、トラブルの原因がある場合がとても多いのです。
を学習するのは、
子どもの育ちには
良くないでしょう。
4-3.もっと詳しくアンダードッグ効果
可愛いとか、別の魅力があって負けそうだと同情を集める感じでアンダードッグ効果が働きやすいという話もあります。
元は選挙の際に「こっちの候補が負けそうだ」という予測報道をしたら、かえって票が集まって逆転勝ちしたという現象の研究から。
世論調査データの分析により 1940年代にアメリカで最初に発見された。
これはアナウンスメント効果の一形態と考えられる。以前日本では「負け犬効果」と直訳されて用いられたこともあったが,意味を誤って伝える可能性もあるので「判官びいき効果」と訳されるようになった。
コトバンク
ちなみに「判官(ほうがん)びいき」の判官とは、鎌倉時代に入る直前に活躍した源義経のこと。
悲劇のヒーローは同情したくなるわけです。
5.ハロー効果(後光効果)
5-1.ハロー効果の一言解説
ある目立つ側面だけを見て、偏った評価をしてしまう心理。
「スーツをピシッと来ているから仕事ができそう」など。
相手の持っている実績や見た目に、こちらの判断が影響されしまうということ。
5-2.保育士として使える場面
子どもを判断するとき
☑「この子なら大丈夫だろう」とか
☑「あの子の兄弟ならいい子に違いない」
などと勝手に思い込み、いざ違った様子だった場合に期待外れの落差が大きくなったりします。
ハロー効果との合わせ技で、こちらの期待感から相手は少しも変わっていないのに見る側の視点で評価が上下してしまわないように気を付けましょう。
また転職に際して「大きい会社だからしっかりしているだろう」などの判断も危ないですね。
入ったら離職率が異常に高いブラック園とか、ザラにあります。
5-3.もっと詳しくハロー効果
ハローとは聖人の頭に書かれている後光のこと。
後光が差していると、なんかすごそうに思う心理。
ハロー効果は心理学における「認知バイアス」の一つで、早い話が思い込みの心理。
正しい判断ができなくなっているので「ハローエラー」とも呼ばれます。
良いものでも働きますが、例えば「人相の悪い人は良くないことをしそう」といったネガティブな方向にも働く効果。
実は権威性やよく分からないすごそうな実績がハローとしてよく使われています。
ネット上に溢れている
- 「3ヶ月で100万円」
- 「○○教授の推薦!」
となって知らない人が
よく騙されています。
6.準拠集団
6-1.準拠集団の一言解説
自分の判断が左右されてしまう、ある価値観を持った所属している(または所属したいと思っている)グループ。
6-2.保育士として使える場面
職場としてよくないのは「我々感情」というもの。
あっちの部署の仕事、こっちの部署の仕事、といったように区別したい心理が働くと、同じ施設内なのにうまく連携が取れなくなります。
特に明確な職場内派閥があると、本来自由にできるはずの判断ができなくなる可能性がありますね。
また他人を評価・判断するときに、その人の所属グループから判断する場合もあります。
ろくでもない
集団に紐づいて、個人を評価してしまうことがあるから注意したいところです。
〇〇大学出身ならすごいはず、などのプラス方面の期待もプレッシャーになってしまうので、気を付けましょう。
準拠集団による判断は、勝手な思い込みで正しい判断ができなくなり目が曇る原因の1つです。
準拠集団の話だとあまり意識されないけれど、最近はジェンダーについて世間が敏感ですね。
例えば「男の子だから〜」などの発言を良くしてるなら、男子という準拠集団で、個人の一面しか見ていない曇った判断をしていることになります。
「男の子だから〜」といった発言が多いだけで、日常的に正確な判断ができてない可能性が高い気がしませんか?
6-3.もっと詳しく準拠集団
ロバート・キング・マートンは準拠集団には「規範型」と「比較型」の2つのタイプがあると論じた。
ウィキペディア
規範型準拠集団は個人に対して意見や振る舞いのヒントなどを与える集団であり、
比較型準拠集団とは自分や他人を評価する基準の枠組みを与える集団である。
人は誰かを評価するときに、集団の影響をもろに受けています。
とても優秀な人材を、集団の中でさらに優秀な人と比べて本質を見抜けないとか。
個人への評価は、集団と切り離すことが必要です。
7.ラベリング効果(レッテル貼り)
7-1.ラベリング効果の一言解説
相手に対してレッテルを貼り、評価を固定することによって、相手の行動や心理を誘導する効果
7-2.保育士として使える場面
保育者は特に気を付けないといけない心理現象です。
ある子どもに「この子はこういう子だ」という思い込みから、その評価に沿った言葉掛けや態度をする。
すると、それに誘導されて子どもがいつの間にかイメージ通りの行動を取るようになってしまいます。
低評価をしていると、低評価に見合った能力になってしまうゴーレム効果など同様、悪影響を与えるわけです。
それは、子どもにとって適切な保育がされない可能性をはらんでいます。
保育者だけでなく、子ども同士でも
嫌なことばかり起こる
そこから仲間はずれとか、悪くするとイジメなどネガティブな方向になる場合も少なくありません。
ラベリングは無意識の心理なので、保育士はそれを知ってちゃんと介入すべきです。
反対にポジティブな方向へラベリングをすることで、プラスに働かせることもできます。
やってご覧
とかね。
ラベリング効果を、ネガティブ方向へ働かせないことが大切です。
7-3.もっと詳しくラベリング
ラベリング効果は、あまり根拠なく人を評価してレッテルを貼った結果、心理や行動がその方向へ動いてしまう効果。
似た言葉でラベリング理論があります。
これは「逸脱行為は社会がラベリングすることで起きる」という理論。
犯罪者を悪者と社会がラベリングすることで、更生しようと思ってもできずに犯罪を繰り返してしまうような仮説です。一理ありますよね。
ラベリング効果をうまく活用できそうな実験もあります。
アメリカの臨床心理学者リチャード・ミラーが行った小学5年生を対象に行った掃除に関する実験を例として挙げます。
ミラーは、あるクラスの小学校5年生の児童に対して、整理整頓しゴミを片づけることの大切さを話しました。一方で、別のクラスの児童に対しては「このクラスは整理整頓が行き届いている」「小綺麗なクラスの一員である」いうことが繰り返し告げました。
その結果、ゴミを片づけることの大切さを聞いた群の児童はゴミの散らかしが改善されなかったのに対して、小綺麗であるという「ラベル」を貼られた児童は他の児童に比べ、3倍もゴミの散らかしが改善されたという結果になったのでした。
TheKenyPres
ベッカーの著書「アウトサーダーズ」
8.割引原理、割増原理
8-1.割引原理の一言解説
割引効果は、原因がいくつかある場合、ある一つの原因が大した影響がないように割り引かれて受け止められてしまうこと。
割増原理は、障害や困難を乗り越えたときに、特定の要因がより評価されるといった現象
例えば悪いことをした人に対して、
「言われて仕方なくやってしまったのか?」
と悪意に満ちた行動でも、割り引かれて評価されるといったこと。
割増の方は、通常の努力より、「ハンデを乗り越えた努力」のほうが評価されやすいようなこと。
8-2.保育士として使える場面
保育者が子どもの行動を判断して指導する場面では、割引効果によって教えたいことがぶれてしまう可能性があります。
ある子どもが人を叩いたとして、原因が「悪口を言われたから」としましょう。
叩いちゃったの!
↑原因があっても、叩いちゃダメですよね。
大人なら傷害で逮捕されます。
だけど割引効果によって、
仕方ないね
と間違った指導をしてしまいがちだから注意しましょうってことです。
やってしまった行為がよくない場合、「仕方なかった」では済ませずにダメはダメとブラさずに教えることが必要です。
言われている子どもが「理由があればやっていいんだ!」と自己正当化、正しい判断基準を学べなくなるためです。
8-3.もっと詳しく割引原理
ある事柄が起きた時、原因はこれだ!と決めるのを帰属過程と呼びます。
割引原理や割増原理は、原因がいくつかあるときに、特定の原因が割り引かれたり、強調されたりする動きです。
●割り引かれるときは
「他にもっともらしい原因がある時」
テストの点が悪かった
・勉強不足
・テストがいつもより難しかった
→勉強不足だけど、テストも難しかったから仕方ないね
(勉強不足が割り引かれた)
●割増で強調されるときは
「困難や抑制する原因がある時」
テストの点が良かった
・勉強を頑張った
・遊びの誘いを断った
→遊びの誘いを断ってまで勉強したから点が良かった
(勉強したのが強調されて良い印象になった)
とされています。
9.人の印象や評価に関連する心理効果まとめ
人の評価は主観によるもので、一度ある印象をもたれるとそれが後を引いてしまいます。
初対面の印象を強調することばかり相手は毎回感じて、いつしかあなたに対しての評価が決まってしまうからです。
はじめに良い第一印象を持たれることに成功すれば、他の部分で多少失敗しても甘く見てくれる可能性も上がりますが(寛大効果)、
途中から評価が下がると、はじめから低評価だった人より更に印象が悪くなるので気をつけたいところ。(ロス効果)
逆に初めに低評価を受けてしまったとしても、挽回すればより高い評価を受けられる可能性が残っています。
なので、日々の積み重ねを頑張りましょう。(ゲイン効果)
一方で保育者のあなたが他人への評価、特に子供に対しての印象を主観で判断してしまうことはとても危険です。
判断基準が集団や属性によったり、泣いてる子を理由に関わらず味方したくなったりと、偏りがちで危ういからなのと、(ハロー効果、アンダードッグ効果、準拠集団)
生まれて何年もたっていない、これから先いくらでも変化できる子どもに対して「この子はこうだ!」
と、主観で決めてしまうことで、必要な支援ができなくなるためです。(ラベリング効果)
子どもの印象については、人間は放っておいたら主観で判断してそれが正しいと偏りがち(フォールスコンセンサス)だという人の性質を知ったうえで、常に中立を保つことを心がけましょう。
ありがとうございました
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その中に心理シリーズを編集して一つにまとめた有料Note記事(予定)も無料で配布していますので、興味があればどうぞ。